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双極性障害への対応|躁・うつの波を見極める声かけ例

「昨日まで布団から出られなかった利用者が、今朝は目を輝かせて『これから新しい事業を始める』と早口で話し続けている」——グループホームや生活介護の現場では、こうした気分の急激な変化に戸惑うスタッフの声をよく耳にします。双極性障害は、躁状態とうつ状態という両極端な気分の波を繰り返す精神疾患であり、対応を誤ると利用者本人だけでなく周囲の関係性にも影響が及びます。本記事では、現場ですぐに活用できる観察のポイントと、支援場面ごとの具体的な声かけ例を整理して解説します。

双極性障害とは|躁とうつの波を理解する

双極性障害(Bipolar Disorder)は気分障害の一種で、躁状態(または軽躁状態)とうつ状態を繰り返す病気です。双極I型障害は少なくとも1回の躁病エピソードを伴い、うつエピソードの有無を問わず診断されます。双極II型障害は軽躁状態とうつ状態を繰り返しますが、完全な躁病エピソードは見られません。どちらの型であっても、気分の波によって日常生活や対人関係に影響が出やすい点は共通しています。

躁状態でみられるサイン

  • 普段より早口でよくしゃべり、話の内容が次々と飛躍する
  • 睡眠時間が短くても「まったく平気」と話す
  • 浪費や衝動的な契約など、リスクの高い行動が増える
  • 気が大きくなり、他の利用者やスタッフとの摩擦が増える
  • 複数の作業に同時に手を付け、集中が長続きしない

うつ状態でみられるサイン

うつ状態では、強い倦怠感によって活動量が大きく落ち込みます。以前は関心を持っていた活動への意欲が失われ、食欲や睡眠のリズムが崩れることも少なくありません。睡眠の乱れが続く利用者への具体的な関わり方は、睡眠障害のある利用者への対応も参考になります。自分を責める発言や、死について話す様子がみられた場合は、後述する緊急時対応の手順に沿って早めに対応することが重要です。

気分の波を示すイメージ図
躁とうつ、両極の気分の波

現場で起こりやすい場面と対応のポイント

躁状態とうつ状態では必要な関わり方が大きく異なります。まずは利用者が「今どちらの状態に近いか」を見極めたうえで、落ち着いて対応することが基本です。日頃からの声かけ・傾聴の基本を押さえておくと、気分の変化にも気づきやすくなります。一人のスタッフの主観だけで判断せず、普段の様子との違いを複数人で確認し、記録として残しておくことも大切です。

躁状態のときの対応

躁状態のときは、刺激を増やさないことが最優先です。大声で早口の利用者に対してこちらも急かされて対応すると、余計に興奮を強めてしまいます。静かな場所へ移動を促し、こちらは低いトーンでゆっくり話すことを意識しましょう。

📋 実践のポイント(生活介護の場面)

生活介護の活動中、利用者が興奮気味に大声で話し出し、他の利用者との関わりでトラブルになりそうな場面。「〇〇さん、今のお話、詳しく聞きたいので、あちらの静かな場所で座って聞かせてもらえますか」と声をかけ、刺激の少ない場所へ移動を促します。話を否定せず一区切りついたところで、活動の見通しを短く伝え直すと落ち着きやすくなります。

うつ状態のときの対応

うつ状態のときは、無理に活動へ誘わないことが大切です。できないことを責めるのではなく、休養も支援の一部であると伝え、安心できる環境を用意しましょう。小さくできたことを言葉にして伝えることも、自己評価の低下を防ぐうえで役立ちます。

📋 実践のポイント(グループホームの場面)

朝起きられず、食事にも手をつけない利用者への対応。「無理に活動に誘わず、今日はゆっくり身体を休める日にしましょう。何か少しでも食べられそうなものはありますか」と選択肢を示しながら声をかけます。着替えや食事を急かさず、できたことがあれば「今日は起きて顔を見せてくれてありがとうございます」と小さな行動を肯定的に伝えます。

不穏時・希死念慮が疑われる場合の緊急対応

利用者が「消えてしまいたい」といった発言をしたときは、一人にせず最後まで話を遮らずに聞くことが基本です。動揺を表に出さず、まずは気持ちを受け止める姿勢を示しましょう。緊急薬の使用や医療機関への連絡が必要かどうかは、医師や看護師など専門職の判断に従い、スタッフ個人で判断しないことが重要です。

📋 実践のポイント(就労支援の場面)

作業中に利用者が小声で「消えてしまいたい」と口にした場面。作業の手を止め、周囲から少し離れた場所で「そう感じるくらい、今つらい状況なんですね」と気持ちをそのまま受け止めます。話を聞いたうえで一人にせず、速やかにサービス管理責任者に報告し、必要に応じて医療機関や家族への連絡につなげます。

スタッフが利用者の話を聞く様子
落ち着いて話を聞く姿勢が基本

気分の波を毎日の記録として残しておくと、家族や医療機関との情報共有がスムーズになります。日々の気分や服薬の記録に使える手帳やノートを探す際は、こちらもチェックしてみてください。

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対応を避けたいNG行動

症状を悪化させたり、利用者の自尊心を傷つけたりする対応は避ける必要があります。以下のような関わり方には注意しましょう。

  • 躁状態の言動を頭ごなしに否定したり、説教したりする
  • うつ状態を「甘え」と捉え、活動を無理強いする
  • 「双極の人だから」といったラベリングで判断する
  • 本人の同意なく、症状や状況を他の利用者に共有する
  • 自立の機会を奪うほどの過保護な関わりをする

服薬管理と家族への支援

双極性障害の治療では、気分安定薬などの服薬が症状のコントロールに大きく関わります。飲み忘れや自己判断での中断は、躁・うつの再燃につながりやすいため注意が必要です。服薬に関する具体的なチェック体制は、服薬管理の基本もあわせて確認しておくと安心です。薬の増減や中止は必ず医師の指示に従い、スタッフだけで判断しないようにしてください。

家族もまた、利用者の気分の波に日々向き合っており、疲弊しやすい立場にあります。病気について正確な情報を伝え、相談できる窓口を案内することも支援の一部です。精神保健福祉センターなど地域の相談機関を、事業所からも積極的に紹介していきましょう。家族から見た自宅での様子と、事業所内での様子をすり合わせておくと、状態の変化にいち早く気づきやすくなります。

利用できる公的サービス

双極性障害のある人が利用できる公的な制度には、通院医療費の自己負担を軽減する自立支援医療(精神通院医療)、症状が一定基準に該当する場合に交付される精神障害者保健福祉手帳、日中活動や就労を支える障害福祉サービスなどがあります。具体的な利用要件は地域によって異なるため、詳細は自治体の窓口や精神保健福祉センターで確認するとよいでしょう。

まとめ

双極性障害への支援では、躁状態とうつ状態それぞれのサインを早めに捉え、状態に応じた声かけと環境調整を行うことが基本になります。緊急時の対応や服薬管理は、必ず医療職・サービス管理責任者と連携しながら進めてください。今日から、気になる言動があった際は些細なことでもメモに残し、朝礼や申し送りで共有する習慣を始めてみましょう。日々の観察と記録を積み重ね、チームで情報を共有しながら、利用者が安心して過ごせる環境づくりに取り組んでいきましょう。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の支援方針・医療的判断・法的判断を保証するものではありません。実際の対応にあたっては、所属事業所のルールやサービス管理責任者・医師・看護師等の専門職の判断に従ってください。