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服薬管理の基本|誤薬事故を防ぐ現場のチェック体制

病気への理解

利用者さんに服薬をお願いした後、「本当に飲み込めていただろうか」「時間を間違えていないだろうか」と不安になった経験はありませんか。障害福祉の現場では、食事介助や排泄介助、記録作成など複数の業務を並行してこなす中で服薬のサポートを行うため、少しの確認漏れが誤薬事故につながりかねません。厚生労働省が公表する医療安全情報でも、確認作業の省略や思い込みが誤薬事故の主要因として繰り返し指摘されています。本記事では、誤薬が起こりやすい背景と、厚生労働省のガイドラインを踏まえた服薬管理の基本、そして現場ですぐに取り入れられるチェック体制の作り方を解説します。

服薬管理のイメージ
服薬支援は日々の積み重ねが要

誤薬事故はなぜ起こるのか|現場に潜む3つの背景

業務の多重化とヒューマンエラー

支援員は食事介助や排泄介助、支援記録の書き方を含む事務作業など、複数の業務を同時にこなしています。服薬のタイミングが他の業務と重なると確認作業が後回しになりやすく、渡し忘れや二重投与のリスクが高まります。特に交代勤務では、前の勤務者からの申し送りが不十分だと、同じ利用者に重複して薬を渡してしまう事例も報告されています。

厚生労働省が公表している医療安全に関する資料でも、確認作業の省略や思い込みが誤薬事故の主要因として挙げられています。「いつも通りだから大丈夫」という思い込みを排除し、毎回同じ手順で確認する仕組みを持つことが重要です。忙しい時間帯ほど、確認を一つの動作としてルーティン化しておくことが誤薬防止の第一歩になります。

利用者ごとに異なる服薬内容と変更頻度

障害福祉サービスの利用者は、精神科や内科など複数の医療機関を受診しているケースが少なくありません。自立支援医療受給者証の取得方法を含め、通院・服薬に関する情報は事業所内で常に最新の状態に保つ必要があります。処方内容が変更された際に情報共有が徹底されず、従来の薬を渡してしまうと誤薬につながります。

特に、同じ薬でも用量や服用時間だけが変更になるケースは見た目で気づきにくく、思い込みによる誤薬が起こりやすい典型例です。対応に迷う場合は必ず医師・看護師・サービス管理責任者に相談してください。

薬の外見や保管方法に起因する取り違えリスク

薬の色や形が似ている、または利用者ごとの薬袋が近い場所に保管されていることも、取り違えの原因になります。特にグループホームのように複数の利用者が同じ空間で生活する場では、薬の保管場所を利用者ごとに明確に分け、名前や顔写真付きのラベルを貼るなど、視覚的に区別できる工夫が有効です。

就労支援事業所でも、利用者が自己管理している薬と事業所で預かる薬が混在しないよう、保管ルールを文書化しておくことが望まれます。持参薬の預かり・返却を記録するノートを用意し、誰が見ても管理状況が分かるようにしておきましょう。

厚生労働省のガイドラインに基づく服薬管理の基本

「5つの正しい」を意識した確認の型

医療安全の分野では、与薬時に「正しい利用者」「正しい薬」「正しい用量」「正しい方法」「正しい時間」の5点を確認する考え方が広く知られています。障害福祉の現場でもこの型を応用し、薬を渡す前に必ずこの5点を声に出して確認する習慣をつけることで、思い込みによる誤薬を大きく減らすことができます。

支援員が行える範囲と医療行為の境界

服薬の声かけや手渡し、飲み込みの確認といった行為は、あらかじめ処方された薬を用法どおりに渡す範囲であれば、原則として医療行為には当たらないとされています。ただし、薬の飲ませ方や量を支援員の判断で変更することは認められていません。体調の変化や飲み込みにくさが見られた場合は、自己判断で対応を変えず、速やかに看護師や医師に相談することが大切です。

粉薬を服用しやすいよう自己判断で服用形態を変える、飲み合わせを考慮して支援員の判断で服用のタイミングをずらすといった対応も、医療職の指示なく行うべきではありません。日頃から「迷ったら止めて確認する」姿勢を職員間で共有しておくことが、誤薬だけでなく、業務範囲を超えた対応の予防にもつながります。

現場での実践的な対応方法

制度の知識だけでは、忙しい現場で誤薬を防ぐことは難しいものです。ここでは、今日から一人で始められるチェックと、チームで取り組む体制づくりの両面から具体策を紹介します。

今日から実践できること

📋 実践のポイント(生活介護・グループホームの場面)

  • 薬を手渡す前に「氏名・薬の種類・用量・時間」の4点を声に出して読み上げ、指差し確認する
  • 服薬後は利用者の口の中を確認し、飲み込みが終わってからチェック表に記入する(記入は後回しにしない)
  • 声かけ例:「〇〇さん、朝のお薬です。一緒に確認しますね」と伝えてから渡す
  • 残薬がある場合はその場で個数を確認し、看護師またはサ責に報告する

チームで連携してできること

📋 実践のポイント(就労支援事業所の場面)

  • 処方変更があった際は、その日のうちに申し送りノートと口頭の両方で全職員に共有する
  • 服薬チェック表はダブルチェック方式にし、渡した職員と確認した職員の両方が署名する
  • 週1回のミーティングで服薬に関するヒヤリハットを共有し、再発防止策を全員で検討する
  • 新人職員にはサービス管理責任者が同行し、独り立ち前に手順を実地で確認する

服薬チェックの精度を高める道具を探している場合は、こちらも参考にしてみてください。

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曜日・時間帯別に仕分けでき残薬確認がしやすい

目盛りや仕切りのあるケースを使うことで、誰が見ても残薬の状態が分かりやすくなり、属人的な確認から仕組みでの確認へと近づけることができます。

職員間のミーティングの様子
情報共有はチームの要

注意点・リスク管理上の留意点

誤薬事故は「起きてしまった後の対応」も重要です。事故発生時は速やかに医療職へ連絡し、状態を確認したうえで、事業所内のヒヤリハット報告書に経緯を記録します。ヒヤリハット報告の書き方を工夫することで原因分析がしやすくなり、再発防止にもつながります。

厚生労働省の障害福祉サービス等報酬改定に関する資料でも、安全管理体制の整備は運営基準の一部として位置づけられており、記録・報告の仕組みを整えることは加算要件にも関わる重要な取り組みです。

また、個人の注意力だけに頼った再発防止策は長続きしません。ダブルチェックの仕組みや、誰が見ても分かる表示方法など、属人的にならない仕組み作りが求められます。服薬に関する判断や対応に迷う場合は、必ず医師・看護師・サービス管理責任者に相談し、自己判断で対応を変更しないようにしましょう。

チェックリストのイメージ
仕組み化がミスを減らす

まとめ

誤薬事故は特定の職員の不注意だけが原因ではなく、業務の重なりや情報共有の仕組みの不備から生じることがほとんどです。「5つの正しい」を意識した確認の型を身につけ、ダブルチェックや保管ルールの明文化など、属人的にならない仕組みをチームで作ることが、利用者の安全を守る一番の近道です。

まずは自分の勤務するフロアで、服薬チェック表の運用状況や薬の保管方法を見直すところから始めてみましょう。小さな確認の積み重ねが、大きな事故を防ぐ力になります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の支援方針・医療的判断・法的判断を保証するものではありません。実際の対応にあたっては、所属事業所のルールやサービス管理責任者・医師・看護師等の専門職の判断に従ってください。