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自傷行為への初期対応|福祉現場でのSOSの受け止め方

支援について

利用者さんの腕に新しい傷を見つけたとき、何と声をかければいいか分からず言葉に詰まった経験はありませんか。自傷行為は「かまってほしいだけ」「本気ではない」と誤解されがちですが、実際には本人なりのつらさへの対処法であることが多く、頭ごなしの叱責や過剰な反応はかえって状況を悪化させます。この記事では、福祉現場で自傷行為に遭遇したときの初期対応の考え方と、チームで取り組む具体的な工夫を解説します。

支援員が寄り添い支える様子
寄り添う姿勢が回復の土台になる

自傷行為の背景にあるもの

自傷行為とは、自らの身体を傷つける行為全般を指し、リストカットや頭を打ちつける、皮膚をかきむしるなど形はさまざまです。多くの場合、強い不安や怒り、孤独感、自己嫌悪といった耐えがたい感情を一時的に和らげるための対処行動として現れます。本人にとっては「生きるための手段」になっていることも少なくありません。

厚生労働省の自殺総合対策の枠組みでも、自傷行為は将来的な自殺リスクと関連し得る重要なサインとして位置づけられています。単発の出来事として片づけず、継続的な観察と記録が必要な行動であるという認識を、まず支援チーム全体で共有しておくことが大切です。

「かまってほしいだけ」と決めつけない

自傷行為を目撃すると、支援員側も動揺し「注目を集めるための行動だ」と結論づけたくなることがあります。しかし本人の内面では、言葉にできないつらさが積み重なっている場合がほとんどです。行動の意味を決めつけず、その背景にある感情や状況を理解しようとする姿勢が出発点になります。

自傷行為の主なパターンを知る

自傷行為には、刃物で皮膚を傷つけるもの、頭部を壁や床に打ちつけるもの、皮膚をかきむしるもの、髪を抜くものなど、さまざまな形があります。行動の激しさや頻度は利用者ごとに大きく異なり、同じ人でもストレスの度合いによって現れ方が変化することがあります。日々の記録を積み重ねてパターンを把握しておくことで、悪化のサインに早期に気づきやすくなります。

きっかけとなる状況を把握する

自傷行為の前には、対人関係のトラブル、予定変更、感覚過敏を刺激する環境など、何らかのきっかけが存在することが多くあります。強度行動障害の理解|背景要因と現場での初期対応で触れた行動の背景理解の考え方は、自傷行為の場面にも共通して応用できます。

現場での実践的な対応方法

今日から実践できること

自傷行為を目撃した直後は、まず本人の安全確保を最優先します。刃物や鋭利なものが近くにある場合は静かに遠ざけ、大声を出したり強く制止したりせず、落ち着いたトーンで声をかけることが基本です。パニックを助長しないよう、支援員自身が動揺を見せないことも重要です。

📋 実践のポイント(生活介護・就労支援の場面)

生活介護中に利用者さんが自分の腕をかきむしり始めたら、まず「痛いところがあるんだね、大丈夫だよ」と落ち着いた声で伝え、他利用者から少し離れた静かな場所へ移動を促します。傷の手当が必要な場合は看護師に引き継ぎ、「なぜやったの」ではなく「今どんな気持ち?」と感情に焦点を当てた声かけを行います。

その場を落ち着かせた後は、傷の程度を確認し、必要に応じて応急処置と医療機関への相談を行います。傷が浅くても繰り返し行われている場合は、医師や看護師、サービス管理責任者への報告を徹底し、対応方針を個人の判断だけで決めないようにしましょう。

対応に迷う場合は必ず医師・看護師・サービス管理責任者に相談してください。自傷行為の程度や頻度によっては、精神科医療との連携が不可欠になる場面もあります。

チームで連携してできること

自傷行為への対応は一人の支援員が抱え込むものではありません。発生状況・きっかけ・対応内容を記録に残し、ケース会議で共有することで、チーム全体が一貫した対応を取れるようになります。多職種連携の基本|医療機関や相談支援専門員との連携術を参考に、医療機関や相談支援専門員とも早めに情報共有しておくと安心です。

📋 実践のポイント(就労移行支援の場面)

就労移行支援の利用者さんが自傷行為を繰り返していることに気づいたら、個別支援計画の目標設定を見直す機会と捉えます。「作業ノルマへのプレッシャー」など具体的なストレス要因を本人と一緒に洗い出し、サービス管理責任者と相談のうえで負荷の調整や休憩時間の確保を計画に反映します。

記録を残す際は、感情的な表現を避け、時系列に沿って事実を整理することが基本です。ヒヤリハット報告の書き方|事故予防に活かす現場の工夫で紹介した書き方の工夫は、自傷行為の記録にもそのまま活用できます。頻度や時間帯、直前の出来事を項目化して残しておくと、後から傾向を振り返りやすくなります。

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デスクで資料を確認しながら相談する様子
チームでの情報共有が対応の質を支える

注意点・リスク管理上の留意点

自傷行為への対応では、いくつかの落とし穴に注意する必要があります。まず、傷の手当てだけに気を取られ、本人の心理的なフォローを後回しにしないことです。処置が終わった後も、落ち着いて過ごせる時間と場所を確保し、否定せずそばにいる姿勢を示しましょう。

また、自傷行為が続く利用者さんに対して「またやったら外出禁止」などの罰則的な対応を取ることは避けるべきです。行動を力で抑え込もうとする対応は、本人の孤立感を強め、かえって行動をエスカレートさせるおそれがあります。虐待防止の観点からも、身体拘束や過度な行動制限は慎重に検討する必要があります。

他の利用者への影響にも配慮が必要です。自傷行為を目撃した他の利用者が動揺したり、模倣行動につながったりする可能性があるため、場面の切り替えや個別対応を柔軟に行える体制を事業所内で整えておきましょう。

加えて見落とされがちなのが、対応にあたる支援員自身の心理的な負担です。目撃した直後に動揺や無力感を抱くのは自然な反応であり、一人で抱え込まず同僚や上司と気持ちを共有する時間を持つことも欠かせません。継続的に対応する事例では、定期的な振り返りの場を設け、支援員同士で負担を分かち合える体制を作っておくとよいでしょう。

ノートに記録をつける様子
経過記録の積み重ねが支援の質を高める

希死念慮をうかがわせる発言や、自傷行為の頻度・深刻さが増している場合は、緊急性の高いサインとして扱い、速やかに医師や精神科医療につなげることが不可欠です。厚生労働省が示す自殺対策の考え方でも、専門機関との早期連携が重視されています。判断に迷うときは一人で抱え込まず、必ず組織として対応してください。

まとめ

自傷行為は本人なりのつらさへの対処行動であり、頭ごなしの否定や罰則的な対応では根本的な解決にはつながりません。安全確保を最優先にしながら、感情に寄り添う声かけと、チームでの記録・連携を積み重ねることが、支援の質を高める第一歩です。支援員自身のケアも忘れずに、無理なく続けられる対応体制を目指しましょう。

今日のミーティングで、自傷行為が見られた利用者さんの記録を見直し、対応方針をチームで確認する時間を作ってみませんか。小さな共有の積み重ねが、いざというときの落ち着いた対応につながります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の支援方針・医療的判断・法的判断を保証するものではありません。実際の対応にあたっては、所属事業所のルールやサービス管理責任者・医師・看護師等の専門職の判断に従ってください。