保護者との面談が終わったあと、少し離れた場所で一人の子どもがじっとスマートフォンをいじっている姿を見かけたことはありませんか。よく話を聞いてみると、障害のある兄弟姉妹のことでいつも自分の気持ちを後回しにしてきた「きょうだい」だった、という経験を持つ支援員は少なくありません。家族支援というと保護者への対応に意識が向きがちですが、きょうだいもまた特有の悩みを抱えながら成長しています。本記事では、きょうだいが抱えやすい心理的な負担の背景と、福祉現場のスタッフが日々の関わりの中でできる具体的な配慮について解説します。
きょうだいが抱えやすい悩みとは
幼少期から積み重なる「気づかれにくい負担」
障害のある子どものきょうだいは、幼い頃から保護者の関心が兄弟姉妹に向きやすい家庭環境で育つことが多くあります。その中で「わがままを言ってはいけない」「自分がしっかりしなければ」という役割意識を早くから身につけてしまう傾向が指摘されています。がまんできることが当たり前とみなされ、自分の気持ちを言葉にする機会が少ないまま成長するケースも珍しくありません。
全国手をつなぐ育成会連合会など障害児者の家族を支援する団体でも、きょうだい支援の必要性が近年繰り返し取り上げられています。本人への支援だけでなく、家族全体を視野に入れた支援の一環として、きょうだいの存在に目を向けることが求められています。
成人期以降に表面化する将来への不安
きょうだいの悩みは、成人期に入るとより具体的な不安として表面化してきます。結婚や就職といった人生の節目で「自分が兄弟の将来をどこまで担うのか」という問いに向き合わざるを得ない場面が出てくるためです。保護者の高齢化が進むにつれて、意思決定支援や生活面の役割を引き継ぐ現実が見え始め、精神的な負担が大きくなることもあります。
こうした将来への不安は、誰に相談すればよいかわからないまま一人で抱え込まれがちです。「親亡き後」を見据えた家族支援|備えと連携のポイントで触れているように、家族全体の将来設計を早い段階から一緒に考える姿勢が、きょうだいの孤立を防ぐ第一歩になります。
現場での実践的な対応方法
今日から実践できること
グループホームや生活介護の面談にきょうだいが同席する機会は意外と多くあります。その際、保護者だけでなくきょうだい本人にも名前を呼んで一言声をかけるだけで、「自分も気にかけてもらえている」という安心感につながります。特別な時間を作る必要はなく、日常のあいさつの延長で十分です。
📋 実践のポイント(生活介護の面談場面)
面談に同席したきょうだいには「〇〇さんも、今日は付き添いありがとうね」と個別に声をかける。話したそうな様子があれば「最近どう?」と短く聞き、深追いせず本人のペースに合わせる。保護者への説明の合間に一瞬でも視線を合わせるだけでも効果がある。
チームで連携してできること
きょうだいへの配慮は一人の職員の気づきだけに頼らず、チーム全体で共有することが重要です。支援記録やケース記録にきょうだいの年齢や関わりの様子を残しておくと、担当者が変わっても一貫した対応ができます。ケース会議の記録の残し方|要点整理と多職種連携のコツを参考に、家族全体の情報を整理しておくとよいでしょう。
📋 実践のポイント(就労支援事業所での連携)
保護者面談の記録に「きょうだい〇歳・同席あり」と一言添えておく。相談支援専門員と情報共有する際は、本人だけでなくきょうだいの心理面の変化についても話題に挙げる。必要に応じて、きょうだい同士が交流できる会や相談窓口の情報を保護者経由で案内する。
家族全体との信頼関係づくりについては家族支援の実践|信頼関係とクレーム対応のコツ、専門機関との連携については相談支援専門員とは|役割・業務・現場連携のポイントもあわせて参考にしてください。
きょうだい支援に関する理解を深めたいときは、書籍を通じて知識を補うのも一つの方法です。業務の参考になる一冊を探す際は、こちらもチェックしてみてください。
🛒 関連アイテムはこちら
障害のある子どものきょうだい支援 をAmazonで見る
家族支援の視点を広げたいときの参考に。
注意点・リスク管理上の留意点
きょうだいへの配慮は、良かれと思っての言動が過度な期待や役割の押し付けにつながらないよう注意が必要です。「お兄ちゃん・お姉ちゃんだから」という言葉かけを無意識に重ねてしまうと、かえって負担を強めてしまう可能性があります。あくまで本人の意思を尊重する姿勢を忘れないようにしましょう。
また、きょうだいのプライベートな感情や家庭内の事情に無理に踏み込もうとしないことも大切です。個人情報の取り扱いにも配慮しながら、本人が話したいタイミングを待つ姿勢が信頼関係につながります。
きょうだいの様子から強い不安や抑うつ的な兆候が感じられる場合は、支援員だけで抱え込まず、対応に迷う場合は必ずサービス管理責任者や相談支援専門員、必要に応じて医師・看護師等の専門職に相談してください。
まとめ
きょうだい支援は、まだ多くの現場で意識的な取り組みが始まったばかりの分野です。特別な制度やプログラムがなくても、日々の面談や来所の場面で名前を呼び、一言声をかけることから始められます。次にきょうだいと接する機会があれば、まずは本人自身に目を向けた声かけを一つ実践してみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の支援方針・医療的判断・法的判断を保証するものではありません。実際の対応にあたっては、所属事業所のルールやサービス管理責任者・医師・看護師等の専門職の判断に従ってください。


