利用者さんが突然体を硬直させ、白目をむいて倒れたとき、何秒くらい様子を見ればいいのか、すぐに救急車を呼ぶべきなのか、とっさに判断に迷った経験はありませんか。てんかん発作は障害福祉の現場で決して珍しい出来事ではありませんが、いざ目の前で起こると頭が真っ白になってしまうという声を新人スタッフからよく聞きます。この記事では、てんかん発作の基礎知識と、発作が起きた際に現場のスタッフが取るべき初期対応の手順、そしてチームで再発リスクに備えるための連携方法を、実践例を交えて解説します。

てんかん発作とは何か・支援員が知っておくべき背景
てんかんの基礎知識と発作の種類
てんかんは脳の神経細胞が異常に興奮することで、意識障害やけいれんなどの発作を繰り返す疾患です。発作には、全身がガクガクとけいれんし意識を失う「強直間代発作」と、数秒〜数十秒間ぼーっとして反応がなくなる「欠神発作」など複数のタイプがあります。障害福祉の現場では、知的障害や自閉スペクトラム症のある利用者にてんかんを併発しているケースが一定数見られることが知られており、事業所として発作への備えを日頃から整えておくことが求められます。
発作のタイプによって現場で観察すべきポイントや対応の緊急度は異なります。そのため、利用者ごとに「どのタイプの発作が起こりやすいか」「通常どのくらいの時間で治まるか」を個別支援計画や引き継ぎ資料であらかじめ把握しておくことが、落ち着いた対応につながります。個別支援計画の書き方を参考に、既往歴や発作時の特徴を記録に残しておくと役立ちます。
発作の誘因としては、睡眠不足や疲労の蓄積、体調不良、服薬の中断、強い光の点滅などが知られています。日々の生活リズムの乱れが発作の引き金になることもあるため、支援員が普段の睡眠時間や食事、体調の変化に目を配ることも間接的な発作予防につながります。特に環境の変化が多い時期や行事の前後は、利用者の疲労が蓄積しやすいため注意深く観察することが大切です。
障害福祉現場での発生頻度と特徴
てんかん発作の多くは数分以内に自然に治まりますが、発作の持続時間が長引いたり短時間に繰り返し発作が起きたりする場合は、生命に関わる緊急事態に発展することがあります。特にグループホームの夜間帯や、生活介護・就労支援の作業中など、スタッフの目が届きにくい場面で発作が起こると発見が遅れるリスクが高まります。
厚生労働省が示す障害福祉サービスの運営基準でも、利用者の心身の状況に応じた緊急時対応体制の整備が求められています。てんかんの既往がある利用者については、発作時の対応手順をあらかじめ事業所内で共有し、誰が対応しても同じ水準のケアができるようにしておくことが重要です。
現場での実践的な対応方法
発作が起きたときにまず行う対応
発作を目撃したら、まず落ち着いて周囲の安全を確保することが最優先です。頭を打たないようクッションや畳んだ衣類を頭の下に入れ、周囲の家具や物をどけて、発作が治まるまでその場で見守ります。無理に体を押さえつけたり、口の中に物を入れたりする行為は、かえって窒息や怪我のリスクを高めるため絶対に行わないでください。
📋 実践のポイント(生活介護・グループホーム共通)
①発見時刻を確認する②体の下に柔らかいものを敷き、顔を横向きにする③眼鏡や周囲の危険物を除ける④発作の持続時間・けいれんの様子・顔色を観察する⑤5分以上発作が続く、または短時間に発作を繰り返す場合はただちに救急要請する。声かけは「大丈夫ですよ、そばにいますからね」と落ち着いたトーンで行い、発作中に無理に体を揺すったり大声で呼びかけたりしないようにします。
チームで連携してできること
発作対応は一人のスタッフだけで完結させず、チーム全体で情報を共有する体制を整えることが再発防止につながります。発作後は速やかに他のスタッフやサービス管理責任者に報告し、家族や主治医への連絡が必要かどうかを判断します。就労支援の場では、作業中に発作の前兆(ぼんやりする、視線が定まらない等)が見られたら無理に作業を続けさせず、休憩できる環境に誘導する声かけも有効です。
📋 実践のポイント(就労支援・チーム連携)
発作後は「いつ・どのくらいの時間・どんな様子だったか」を記録し、朝礼や申し送りで全スタッフに共有します。同じ利用者が繰り返し発作を起こす場合は、作業内容や生活リズムに発作の誘因(睡眠不足・服薬忘れ・体調不良等)がないか、多職種でカンファレンスを行い見直すことが望まれます。
発作の記録を正確に残すことは、次回以降の対応判断や医師への情報提供に直結します。記録の書き方に迷う場合はヒヤリハット報告の書き方も参考にしてください。
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注意点・リスク管理上の留意点
発作対応で特に注意したいのは、救急要請の判断基準をあいまいにしないことです。発作が5分以上続く場合、意識が戻らないまま次の発作が始まる場合、頭部を強く打った場合、呼吸が苦しそうな場合は、迷わず119番通報してください。「いつもより短いから大丈夫」といった自己判断は避け、事業所であらかじめ定めた基準に従うことが安全な運営につながります。
また、抗てんかん薬の服薬状況は発作の頻度に直結する重要な情報です。服薬忘れが続いていないか、体調不良で薬が飲めていないかなど、日々の服薬管理も発作予防の一環として意識しておく必要があります。服薬管理の基本もあわせて確認しておくとよいでしょう。対応に迷う場合は必ず医師・看護師・サービス管理責任者に相談してください。
発作後に事故として報告書を残すべきかどうかの判断も事業所ごとに基準が異なります。判断に迷う場合は事故発生時の初期対応の考え方を参考に、記録・報告のルールを事前にチームで確認しておくことをおすすめします。
発作を目撃した際は、利用者本人のプライバシーにも配慮が必要です。他の利用者の前で発作の様子を詳しく話題にしたり、家族への報告時に必要以上の情報を共有したりしないよう注意しましょう。発作後は本人が混乱していることも多いため、落ち着くまでそばに付き添い、安心できる声かけを続けることも大切な支援の一部です。

発作の記録は本人の同意と説明のもと、必要な範囲で家族や関係機関に共有することが基本です。日頃から情報共有の範囲についてサービス管理責任者と確認しておくと、緊急時にも迷わず対応できます。
まとめ
てんかん発作は、正しい知識と落ち着いた初期対応があれば、決して過度に恐れる必要のあるものではありません。頭を守り、安全な場所を確保し、時間を計りながら様子を観察するという基本の流れを体に覚えさせておくことが、いざというときの安心につながります。
まずは自分の事業所で、てんかんの既往がある利用者の発作の特徴や緊急連絡先を確認し、明日からの申し送りに反映させてみてください。日頃の備えの積み重ねが、利用者の安全とチームの自信につながります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の支援方針・医療的判断・法的判断を保証するものではありません。実際の対応にあたっては、所属事業所のルールやサービス管理責任者・医師・看護師等の専門職の判断に従ってください。


