「お酒がやめられない」「また薬に手を出してしまった」――利用者さんからそんな言葉を聞いて、どう返せばいいか言葉に詰まった経験はありませんか。依存症は本人の意志の弱さの問題ではなく、脳の仕組みに関わる「疾患」であることが、厚生労働省の依存症対策でも明確にされています。しかし現場では「またか」という感情が先に立ち、対応に迷う支援員が少なくありません。この記事では、依存症のある利用者への基本的な理解と、グループホームや生活介護、就労支援の現場ですぐに実践できる対応のポイントを解説します。

依存症とは何か、現場が知っておくべき背景
依存症とは、アルコールや薬物、ギャンブル等の使用・行動を「やめたくてもやめられない」状態が続く精神疾患です。厚生労働省は依存症を「回復可能な疾患」と位置づけ、自助グループや専門医療機関と連携した継続的な支援の重要性を示しています。福祉現場のスタッフは治療者ではありませんが、日常生活を支える立場として、正しい知識を持つことが利用者の回復を後押しする第一歩になります。
意志の問題ではなく脳の疾患である
依存症は、快感や報酬に関わる脳内の神経回路が変化し、自己コントロールが効きにくくなることで生じます。本人の性格や努力不足として叱責しても、症状の改善にはつながりません。むしろ叱責や孤立は再使用(再飲酸・再使用)のリスクを高めることが知られています。まずは「意志の問題ではない」という前提を支援チーム全体で共有することが重要です。
再発を繰り返しやすい特性を理解する
依存症は糖尿病や高血圧のような慢性疾患と同様に、寛解と再発を繰り返しながら回復していく経過をたどることが一般的です。一度の再使用で「支援の失敗」と捉えるのではなく、回復過程の一部として受け止める視点が必要です。再使用が起きた際も責めるのではなく、その背景にあったストレスやきっかけを一緒に振り返る姿勢が、次の行動につながります。
現場での実践的な対応方法
今日から実践できること
日々の関わりの中では、利用者の変化にいち早く気づき、否定せずに受け止める声かけが基本になります。以下の実践例ボックスは、生活介護やグループホームでの具体的な場面を想定した対応例です。
📋 実践のポイント(グループホームでの声かけ例)
利用者さんの様子がいつもと違う(そわそわしている、イライラしている等)と感じたら、「最近何か困っていることはありますか」と穏やかに尋ねます。飲酒や薬物使用を疑っても、いきなり問い詰めるのではなく、「今日はゆっくり話す時間を作りましょうか」と安心できる場を先に用意することが大切です。再使用が疑われる場合も「なぜ使ったのか」と責めるのではなく、「何がきっかけだったか一緒に考えよう」と伝えます。
チームで連携してできること
依存症のある利用者への支援は、一人の職員が抱え込むものではありません。多職種連携の基本|医療機関や相談支援専門員との連携術で紹介されているように、精神科医療機関や精神保健福祉センター、自助グループ(AA・NA・断酒会等)と情報を共有しながら支援方針をすり合わせることが再発防止につながります。個々の職員の判断でルールを変えず、チーム全体で対応を統一することも欠かせません。
📋 実践のポイント(就労支援事業所でのチーム対応例)
出勤時のアルコールチェックで異常が見られた場合、担当職員だけで判断せず、あらかじめ定めた報告ルートに沿ってサービス管理責任者に速やかに共有します。本人には「体調が心配だから今日は休んで、後日また話そう」と伝え、通院同行や自助グループへの参加状況を支援記録に残し、次回のケース会議で振り返ります。
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注意点・リスク管理上の留意点
依存症のある利用者への対応では、支援員の善意が「イネイブリング(結果的に依存を助長する関わり)」につながるリスクにも注意が必要です。例えば、金銭トラブルを職員が肩代わりしたり、飲酒による欠勤を過度に庇ったりすることは、本人が問題に向き合う機会を奪ってしまいます。困っている姿を見過ごせない気持ちは自然なものですが、支援と過干渉の線引きをチームで確認しておくことが大切です。
また、離脱症状(禁断症状)が疑われる場合や、意識障害・けいれん等の身体症状が見られる場合は、福祉スタッフの判断だけで様子を見ず、速やかに医療機関につなぐ必要があります。服薬管理の基本|誤薬事故を防ぐ現場のチェック体制とあわせて、服薬状況の変化にも日頃から目を配りましょう。対応に迷う場合は必ず医師・看護師・サービス管理責任者に相談してください。
家族との関わり方にも配慮が求められます。家族自身が「共依存」の状態に陥り、本人の問題行動を無意識に支えてしまっているケースも少なくありません。家族支援の実践|信頼関係とクレーム対応のコツを参考に、家族を責めるのではなく、家族自身の相談先(精神保健福祉センターの家族教室等)の情報提供も含めた支援を検討してください。

まとめ
依存症は「意志の弱さ」ではなく回復可能な疾患であり、再発を繰り返しながら少しずつ回復に向かうという特性を理解することが、現場での適切な対応の出発点になります。責めずに受け止める声かけと、チームで統一した対応、そして医療・専門機関との連携が、利用者の安定した生活を支える力になります。まずは明日のミーティングで、依存症への理解や自事業所の対応ルールをチームで確認するところから始めてみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の支援方針・医療的判断・法的判断を保証するものではありません。実際の対応にあたっては、所属事業所のルールやサービス管理責任者・医師・看護師等の専門職の判断に従ってください。


