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褥瘡予防の基本|福祉現場でできる観察と体位交換のコツ

支援について

利用者さんの体を清拭している際に、いつも同じ場所の皮膚が赤くなっていることに気づいた経験はありませんか。

車椅子を長時間利用する方や、ベッド上で過ごす時間が長い重症心身障害のある利用者では、同じ部位に圧力がかかり続けることで褥瘡(じょくそう、いわゆる床ずれ)が発生するリスクが高まります。褥瘡は一度できてしまうと治癒までに長い時間がかかり、感染症の入口にもなりかねないため、予防的な観察とケアが何より重要です。

この記事では、褥瘡がなぜ起こるのか、好発部位や初期サインをどう見分けるか、そして体位交換やスキンケアなど福祉現場で今日から実践できる予防策について解説します。

医療用手袋を着けたスタッフの手
皮膚の観察は毎日の積み重ねが大切

褥瘡はなぜ起こるのか|背景とリスク要因

褥瘡が発生する仕組みと好発部位

褥瘡は、皮膚の同じ部分に持続的な圧力がかかることで血流が滞り、組織が損傷することで発生します。日本褥瘡学会の褥瘡予防・管理ガイドラインでも、体重による圧迫に加えて「ずれ」「摩擦」「湿潤」が発生要因として挙げられています。特に骨が突出している部分は圧力が集中しやすく、注意が必要です。

好発部位として代表的なのは、仙骨部・尾骨部・かかと・肩甲骨・耳介などです。車椅子を利用する方では坐骨部にも圧力が集中しやすいため、座位姿勢のチェックも欠かせません。利用者の体格や麻痺の有無によって圧力のかかりやすい部位は異なるため、個別に観察ポイントを把握しておく必要があります。

臨床の場ではブレーデンスケールなどの褥瘡発生予測ツールを用いてリスクを点数化することもありますが、専門的な評価は看護師等の医療職が担うのが基本です。支援員としては、こうした評価結果を踏まえて日々のケアに反映させる視点を持っておくとよいでしょう。

リスクを高める利用者側の要因

加齢による皮膚の脆弱化、栄養状態の低下、知的障害や意識レベルの低下により自分で体位を変えられないことなどは、褥瘡のリスクを高める代表的な要因です。失禁による皮膚の湿潤や、るいそう(やせ)による骨突出も見逃せないポイントになります。

高齢化が進む障害福祉サービスの現場では、加齢に伴う皮膚や血流の変化を踏まえたケアがますます重要になっています。高齢障害者への支援|加齢に伴う変化と現場の対応ポイントも参考に、加齢による身体変化を総合的に捉えることが予防の第一歩です。

現場での実践的な対応方法

今日から実践できる観察とケアの工夫

褥瘡予防の基本は「圧迫を減らす」「皮膚を清潔で乾燥した状態に保つ」「栄養状態を整える」の3点に集約されます。入浴や清拭の際には、赤み・熱感・皮膚の硬さなど初期サインを見逃さないよう、決まった部位を毎回確認する習慣をつけましょう。

発赤を見つけた場合は、指で軽く押して10〜30秒以内に赤みが消えるかどうかを確認します。すぐに消えない発赤(消退しない発赤)は褥瘡の初期段階の可能性があるため、看護師やサービス管理責任者にすぐ共有することが大切です。皮膚の色調変化は写真で記録し、経過を比較できるようにしておくと変化に気づきやすくなります。

スキンケアの面では、洗浄後の水分をしっかり拭き取り、皮膚が乾燥しやすい部位には保湿剤を使用することも有効です。反対に汗や排泄物による湿潤が続く部位は、こまめな清拭とおむつ交換で乾いた状態を保つよう心がけましょう。摩擦やずれを避けるため、シーツのしわを伸ばすといった細かな配慮も積み重ねが大切です。

📋 実践のポイント

【生活介護・入所施設での体位交換の目安】
・自力での体位変換が難しい利用者には、2時間ごとを目安に体位交換を行う
・体位交換時は「圧迫していた部位に赤みや熱感がないか」を毎回目視で確認する
・体位を変えるときは「今から右側に向きを変えますね」と一声かけてから行う
・除圧マットやクッションを使用している場合も、定期的な体位交換は省略しない

チームで連携してできること

褥瘡予防は一人のスタッフだけで完結するものではなく、体位交換のタイミングや皮膚の状態を記録し、チーム全体で共有する仕組みが欠かせません。個別支援計画の中にリスクの高い利用者への対応方針を明記しておくと、担当者が変わっても一貫したケアを継続できます。

医療的ケアが必要な利用者については、医療的ケア基礎知識|喀痰吸引と経管栄養の実務で紹介しているような看護師との連携体制を、皮膚状態の観察にも応用すると効果的です。日々のバイタルチェックや記録の際に、皮膚の状態も併せて確認する習慣をつけましょう。

📋 実践のポイント

【就労支援・生活介護での座位姿勢チェック】
・車椅子利用者は1時間に1回を目安に、坐骨部の圧を逃すためのプッシュアップや姿勢の調整を促す
・「少し体を浮かせてみましょうか」と声をかけ、本人ができる範囲で圧抜き動作を一緒に行う
・座面のクッションがへたっていないか、定期的に点検する
・気づいた皮膚の変化は支援記録に必ず残し、朝礼やケース会議で共有する

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注意点・リスク管理上の留意点

褥瘡の予防や対応は医療的な判断を伴う場面が多いため、自己判断での処置は避け、対応に迷う場合は必ず医師・看護師・サービス管理責任者に相談してください。特に水疱や皮膚の損傷がみられる場合は、感染予防の観点からも早期の医療連携が欠かせません。

報酬改定のたびに医療的ケアや栄養管理に関する加算要件が見直されることもあるため、事業所として褥瘡予防に関する体制を整える際は、最新の制度動向にも目を配っておくと安心です。日頃から研修や勉強会を通じて、スタッフ間で観察の視点や対応方法をすり合わせておくことも、質の高いケアの継続につながります。

重症心身障害のある利用者など、自ら痛みや不快感を訴えることが難しい方への支援では、日常的な観察の積み重ねがより重要になります。重症心身障害児者との関わり方|医療的ケアと日常支援の基本で紹介しているような日々の丁寧な観察の視点を、褥瘡予防にも活かしていきましょう。

また、栄養状態の低下は褥瘡の治りにくさに直結するため、食事量や水分摂取量の変化にも注意を払い、必要に応じて管理栄養士や医療職と情報共有することが望まれます。おむつ交換や失禁時の対応が遅れると皮膚の湿潤が続き、リスクがさらに高まる点にも留意しましょう。

皮膚に変化が見られた際は、家族への説明も丁寧に行うことが信頼関係の維持につながります。いつから、どの部位に、どのような変化が見られたかを記録に基づいて具体的に伝え、事業所としてどのような対応を行っているかを併せて説明すると、家族の不安を和らげることができます。

車椅子で移動を介助する様子
移動時の姿勢確認も予防の一環

まとめ

褥瘡は「気づいたときには進行していた」ということが少なくないからこそ、日々の観察と早めの対応が予防の鍵になります。体位交換やスキンケアといった基本的なケアを丁寧に積み重ね、チームで情報を共有する仕組みを整えていきましょう。

まずは今日の入浴介助や体位交換の際に、いつもより少し時間をかけて利用者の皮膚の状態を観察することから始めてみませんか。小さな気づきの積み重ねが、利用者の安心と健康を守ることにつながります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の支援方針・医療的判断・法的判断を保証するものではありません。実際の対応にあたっては、所属事業所のルールやサービス管理責任者・医師・看護師等の専門職の判断に従ってください。