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「親亡き後」を見据えた家族支援|備えと連携のポイント

その他

「お母さん、もし私に何かあったらこの子はどうなるんでしょうか」。利用者の高齢の保護者から、面談の合間にふとこう尋ねられて、とっさに言葉に詰まった経験はないでしょうか。障害のある利用者を長年支えてきた家族にとって、自分が高齢になったときや亡くなったあとの生活は大きな不安の種です。

本記事では、いわゆる「親亡き後」問題の背景と、支援員が現場で今日からできる家族支援の具体的な進め方、そして相談支援専門員や成年後見制度など多職種・制度との連携のポイントを解説します。

家族との面談で相談を受ける支援員のイメージ
家族の不安に耳を傾ける面談の場

「親亡き後」問題とは|家族が抱える不安の背景

高齢化する保護者が抱える課題

障害のある子どもを持つ保護者の高齢化が進み、80代の親が50代の子どもを支える「8050問題」は障害福祉の現場でも他人事ではありません。長年在宅で介護・支援を担ってきた家族ほど、自分自身の体力低下や病気をきっかけに、これまでの生活が急に立ち行かなくなる不安を抱えています。

加えて、金銭管理や契約行為、日常生活の細かな判断まで親が担ってきたケースでは、その役割を誰が引き継ぐのかという具体的な見通しが立っていないことも少なくありません。相談支援専門員やサービス管理責任者と情報共有をしないまま、家族だけで問題を抱え込んでいる場合、支援員が日々の関わりの中で最初に異変や不安の兆候に気づく立場になります。

保護者の入院や要介護認定の申請といった出来事は、それまで先送りにしてきた将来設計を一気に現実の課題として突きつけます。グループホームなど地域生活への移行や短期入所の活用は、実際に危機が起きてから検討し始めると選択肢が限られてしまうため、家族の体力や判断力が保たれているうちから少しずつ話し合いを始めておくことが望ましいとされています。

支援員が向き合う場面の具体例

送迎時の立ち話や連絡帳のやり取りの中で「最近足腰が弱ってきて」「入院することになって」といった保護者の体調変化の話を耳にする場面は珍しくありません。また、面談の場で将来の生活について漠然とした不安を口にされても、制度や選択肢を十分に説明できず会話が終わってしまうこともあるでしょう。

こうした場面を「個人の家庭の話」として流さず、事業所として把握し、必要な支援につなげる入り口として捉える視点が重要です。相談支援専門員と早めに情報を共有できる関係づくりが、家族の不安を軽減する第一歩になります。

また、将来の生活を心配しているのは保護者本人だけとは限りません。きょうだいが将来的な支援の担い手として期待され、負担を感じているケースも見られます。面談の機会にきょうだいの存在や関わり方についても話題にすることで、家族全体の状況をより正確に把握できます。

現場での実践的な対応方法

今日から実践できること

家族の言葉の中にある小さなサインに気づいたときは、まず受け止めることから始めます。以下はグループホームでの送迎時に保護者から将来の不安を相談された場面を想定した対応例です。

📋 実践のポイント(グループホームでの送迎場面)

  • 「教えてくださりありがとうございます」と不安を否定せず、まずは傾聴する
  • 「サービス管理責任者にも共有してよいか」を確認し、その日のうちに事業所内で情報共有する
  • 家族の了承を得たうえで、相談支援専門員へ連絡し、緊急時の受け入れ先やショートステイの利用可能性を確認する
  • 本人にも分かる範囲で、今後の生活について一緒に考えたい旨を伝え、本人の意思決定支援を並行して進める

チームで連携してできること

個人の気づきを事業所全体の仕組みにつなげることで、担当者が変わっても対応の質を維持できます。就労継続支援事業所での取り組み例を紹介します。

📋 実践のポイント(就労継続支援事業所でのチーム連携)

  • 個別支援計画の見直し時期に合わせ「緊急連絡先・キーパーソン確認シート」を家族と一緒に年1回更新する
  • 相談支援専門員を交えたケース会議で、成年後見制度の利用検討やグループホームなど地域移行の選択肢を早めに共有する
  • 地域の基幹相談支援センターや権利擁護センターの連絡先を事業所内で一覧化し、誰でもすぐ紹介できる体制を整える
  • 家族が高齢で来所が難しくなった場合の連絡手段(電話・オンライン面談等)をあらかじめ決めておく

個別支援計画の見直しやケース会議の記録の残し方については、個別支援計画の書き方|目標設定とモニタリングのコツも参考にしてください。

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多職種で情報共有するオンライン会議の様子
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注意点・リスク管理上の留意点

家族の将来設計に関する話題は、本人の意思決定支援と切り離して進めてはいけません。厚生労働省の「障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン」でも、本人の意思を最大限尊重したうえで支援方針を検討することが求められており、家族の意向だけで将来の生活の場やサービス利用を決めてしまわないよう注意が必要です。

また、成年後見制度や金銭管理、相続といった話題は法的・専門的な判断を伴うため、支援員個人の判断で助言せず、相談支援専門員や地域の権利擁護センター、司法書士・弁護士等の専門職につなぐことを徹底してください。健康状態や医療的な内容に踏み込む場合、対応に迷う場合は必ず医師・看護師・サービス管理責任者に相談してください。

情報の記録・共有についても、個人情報保護の観点から本人・家族の同意を得たうえで、必要な範囲に限定して多職種と共有することが原則です。将来の生活の場を検討する際は、自立生活援助とは|対象者・支援内容と現場のポイントのような選択肢も含め、本人・家族に幅広い情報を提供することが大切です。

さらに、支援員一人が家族対応を抱え込むと、担当者の異動や退職をきっかけに関係が途切れてしまうリスクがあります。相談内容や次の対応予定は必ず記録に残し、複数の職員が経緯を把握できる状態を保つことが、長期的に家族を支える体制づくりにつながります。

高齢の保護者の手元のイメージ
高齢化する保護者への配慮

まとめ

制度は年々見直されており、家族が持っている知識が古いままになっていることもあります。事業所内で定期的に制度の最新情報を確認し、家族から質問を受けたときに落ち着いて答えられるよう備えておくことも、日頃からできる備えのひとつです。

「親亡き後」を見据えた家族支援は、特別な制度を新しく学ぶことよりも、日々のちょっとした会話の中にあるサインを見逃さず、事業所内・多職種で共有する姿勢から始まります。経済面の見通しを含めた相談には、障害年金の基礎知識|等級・金額・受給要件をやさしく解説も併せて参考にしてください。

まずは今日の送迎や面談の場で、家族の言葉に一歩踏み込んで耳を傾けることから始めてみてください。そして気になる情報があれば、一人で抱え込まずサービス管理責任者や相談支援専門員に共有し、チームとして次の一手を検討していきましょう。日々の小さな積み重ねが、家族にとっての安心につながります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の支援方針・医療的判断・法的判断を保証するものではありません。実際の対応にあたっては、所属事業所のルールやサービス管理責任者・医師・看護師等の専門職の判断に従ってください。