当サイトでは障害福祉事業所で働くスタッフさん向けの情報ブログになります

不審者対応の基本|福祉施設の防犯対策と初期行動

緊急時対応・リスク管理

面会に来たという見知らぬ人物が、事業所の玄関先で職員の名前を挙げて強い口調で呼び出している。そんな場面に遭遇したとき、とっさにどう対応すればよいか迷った経験はありませんか。

グループホームや生活介護、就労支援の現場は、利用者やご家族、相談支援専門員など多くの人が出入りする開かれた場所です。だからこそ不審者への対応は後回しになりがちで、いざというときに職員一人が孤立してしまう事業所も少なくありません。本記事では、福祉現場で起こりうる不審者対応の基本的な考え方と、今日から取り組める具体的な防犯対策を解説します。

事業所の入口のイメージ
開かれた事業所の入口

福祉現場が抱える防犯上の課題

開かれた環境ゆえのリスク

障害福祉サービスの事業所は、医療機関や一般企業と異なり、来訪者の出入りを厳しく制限しにくいという特徴があります。利用者の家族や相談支援専門員、行政の担当者など、日常的に多くの外部者が訪れるため、必ずしも顔見知りとは限りません。この開放性は利用者の地域生活を支えるうえで欠かせない一方、防犯の観点では死角になりやすい要素でもあります。

また、夜勤帯や休日は職員数が限られ、来訪者への対応が一人の職員に集中しやすい時間帯でもあります。日中の体制を前提とした対応ルールしか整備されていない事業所では、こうした手薄な時間帯に不審な来訪があった場合、初動が遅れるおそれがあります。

実際に起こりうる不審者事案のパターン

不審者対応と聞くと刃物を持った侵入者のような極端な事例を想像しがちですが、現場で実際に多いのは、感情的になった元利用者の家族や、契約関係のない人物が強引に面会や金銭の要求をしてくるケースです。宅配業者や点検業者を装って施設内に立ち入ろうとする事例も報告されています。

例えば就労支援の現場では、「以前利用していた」と名乗る人物が金銭トラブルを理由に強引に事業所を訪れるケースが典型例として挙げられます。グループホームでは、夜間帯に「知人の家族」を名乗る人物から訪問の連絡が入り、本人確認が取れないまま対応に苦慮する場面も想定されます。こうした具体例を職員間であらかじめ共有しておくことで、類似の場面に遭遇した際も落ち着いて初期対応にあたることができます。

特に近年は、過度なクレームや威圧的な要求といった利用者対応の延長線上にあるケースと、明らかな不審者・侵入者のケースとの境界があいまいになりやすい点にも注意が必要です。カスタマーハラスメント対策で紹介した初動の切り分けと合わせて、「どこからが防犯対応に切り替わる場面か」を事業所内であらかじめ整理しておくと、現場の職員が迷わず動けます。

こうした事案は発生件数こそ多くはありませんが、ひとたび起きると利用者の安全だけでなく、職員が安心して働き続けられる環境にも直結します。防犯対策を「まれにしか起きないから」と後回しにせず、虐待防止や事故防止と同じ水準のリスクとして事業所全体で位置づけることが、結果的に職員の定着にもつながります。

現場での実践的な対応方法

不審者対応というと大掛かりな設備投資をイメージしがちですが、実際にはご利用者やご家族への日常的な対応と同じ動作の延長でできることがほとんどです。ここでは、個人ですぐに実践できることと、チームで仕組みとして整えておくべきことに分けて紹介します。

今日から実践できること

不審者対応の基本は、特別な訓練を受けた職員だけでなく、すべてのスタッフが共通の初期行動を身につけていることです。来訪者には必ず氏名・用件・所属を確認し、記録簿に残す習慣を徹底しましょう。

📋 実践のポイント

来訪者対応の基本動作:①「恐れ入りますが、お名前とご用件を伺えますか」と落ち着いた声で確認する/②不審な言動があれば一人で対応せず「少々お待ちください」と声をかけていったん場を離れ、他の職員に応援を要請する/③興奮した相手とは視線を合わせすぎず、出入口を背にしない位置で対応し、いつでも避難できる導線を確保する。

チームで連携してできること

個人の判断力だけに頼ると、対応する職員によって初期行動にばらつきが出てしまいます。事業所全体で合言葉や内線コールなど、異変を周囲に知らせる合図をあらかじめ統一しておくことが重要です。

地域の交番や警察署に日頃から事業所の存在を知らせておき、不審な来訪があった際にすぐ相談できる関係を築いておくことも有効です。緊急性が低い相談であれば、警察相談専用ダイヤル(#9110)の活用も選択肢の一つになります。

📋 実践のポイント

チームでの備え:①「〇〇さん、応接室にお願いします」など特定のフレーズを緊急連絡の合図として全職員に共有する/②年に1〜2回、不審者対応を想定した簡易な訓練(ロールプレイ)を実施し、通報から避難までの流れを確認する/③施錠管理や防犯カメラの設置状況を定期的に点検し、死角になりやすい通用口や夜間の出入口を洗い出す。

また、不審者への対応があった場合は、ヒヤリハット報告と同様に必ず記録を残し、翌日の申し送りや会議で共有することが欠かせません。小さな違和感の段階で共有しておくことで、次に同じ来訪者が現れた際にも組織として一貫した対応を取ることができます。

日頃の備えとして、携帯できる防犯用品を職員の動線に合わせて用意しておくのも一つの方法です。業務の参考になるアイテムを探す際は、こちらもチェックしてみてください。

🛒 関連アイテムはこちら

防犯ブザーをAmazonで見る
夜勤帯の巡回や単独対応時の備えに

施設に設置された防犯カメラ
設置された防犯カメラ

注意点・リスク管理上の留意点

不審者対応は、利用者やご家族との信頼関係を損なわないよう、過度に威圧的・排他的な雰囲気にならない配慮も欠かせません。必要以上に来訪者を疑う態度は、本来支援すべきご家族との関係悪化にもつながりかねません。

一方で、個人情報保護の観点から、対応記録には来訪者の氏名や用件だけを簡潔に残し、詳細な経緯の共有は関係職員に限定することも大切です。日頃から秘密保持のルールを整備している事業所であれば、防犯対応時の情報共有もそのルールに沿って運用しましょう。

不審者対応は福祉事業所の災害時BCP利用者の行方不明時の初期対応と同様に、発生頻度は低くても影響が大きいリスクです。厚生労働省や自治体が公表する福祉施設向けの安全対策の手引きでも、こうした低頻度・高影響リスクへの平時からの備えが繰り返し指摘されています。日頃の訓練や情報共有を、他の緊急時対応マニュアルとあわせて整備しておくことが望まれます。

  • 出入口や通用口の施錠状況を定期的に確認しているか
  • 来訪者の記録簿・受付フローが全職員に周知されているか
  • 異変時の合言葉・通報手順を新人職員にも共有できているか
  • 夜間・休日など職員が少ない時間帯の対応ルールを別途定めているか

チェックリストで不足が見つかった場合は、気づいたまま放置せず、次回の会議までに担当者と改善期限を決めて対応する仕組みも合わせて整えておくとよいでしょう。

施錠を確認するドアのイメージ
施錠管理も防犯の基本

まとめ

不審者対応は特別なスキルではなく、日々の来訪者対応の延長線上にある基本行動の積み重ねです。まずは自分の事業所で「来訪者に声をかける」「一人で対応しない」というルールが徹底されているか、今日のミーティングで確認してみましょう。

防犯対策は一度整備して終わりではなく、来訪者対応の記録や訓練の振り返りを通じて、定期的に見直していくことが大切です。小さな気づきを積み重ねる姿勢が、利用者と職員双方の安心につながります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の支援方針・医療的判断・法的判断を保証するものではありません。実際の対応にあたっては、所属事業所のルールやサービス管理責任者・医師・看護師等の専門職の判断に従ってください。