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利用者からの暴力対応|職員を守る初動と再発防止

緊急時対応・リスク管理

利用者さんから突然平手で打たれたり、「出て行け」と大声で怒鳴られたりして、とっさにどう対応すればいいか分からなかった経験はありませんか。

その場をどうにか収めても、「自分の対応は正しかったのか」「次も同じことが起きたらどうしよう」という不安が後から押し寄せてくることも少なくありません。利用者本人からの暴力・暴言は、支援員が一人で抱え込みやすい問題でもあります。

本記事では、利用者からの暴力・暴言が起こる背景、現場での初動対応の手順、チームで取り組む再発防止策、そして対応にあたった職員自身のケアについて、制度やガイドラインに基づいて解説します。

グループホームや生活介護、就労支援などサービス形態によって現場の状況は異なりますが、基本となる考え方は共通しています。自分自身や職場の状況に当てはめながら読み進めてみてください。

福祉施設の職員が働く様子
業務にあたる福祉施設の職員

利用者からの暴力・暴言が起こる背景

コミュニケーションの困難と感覚過敏

利用者からの暴力・暴言の多くは、悪意や性格の問題ではなく、本人が置かれている状況への反応として起こります。言葉で要求や不快感を適切に伝えられない場合、行動として表出されることがあるためです。

特に自閉症スペクトラムや知的障害のある利用者では、見通しが立たない状況の変化や、音・光・接触といった感覚刺激への過敏さが、強い苦痛やパニックにつながることがあります。行動の背景を理解する視点は強度行動障害の理解|背景要因と現場での初期対応でも詳しく解説しています。

また、精神疾患の急性症状や、服薬調整中の不安定な時期にも、普段とは異なる言動が見られることがあります。「なぜこの時間に、なぜこの場面で起きたのか」という視点で振り返ることが、再発防止の出発点になります。

記録を振り返る際は、行動そのものだけでなく「直前に何があったか」「その行動の後どう対応したか」という前後関係に着目すると、繰り返しやすい場面が見えてきます。これは行動の背景を探るうえで現場でも使いやすい視点です。

放置した場合に生じるリスク

利用者からの暴力・暴言を「仕事だから仕方ない」として個人で処理し続けると、対応した職員の心身に負担が蓄積します。慢性的な緊張状態は、感情労働による疲弊と同様に、離職やバーンアウトの引き金になり得ます。

さらに、記録や報告が不十分なまま時間が過ぎると、同じパターンの行動が繰り返され、他の職員も同じ被害を受ける可能性があります。労働安全衛生法では事業者に職場環境の安全配慮義務が課されており、利用者からの暴力への対応も例外ではありません。

なお、家族や来訪者など事業所外の人からの迷惑行為への初動対応はカスタマーハラスメント対策|福祉現場でスタッフを守る初動で解説したとおりですが、利用者本人からの暴力・暴言には、障害特性への理解を踏まえた異なる視点での対応が必要です。

現場での実践的な対応方法

今日から実践できること(初動対応)

暴力・暴言が起きた瞬間は、まず自分と周囲の利用者の安全確保を最優先します。距離を取れる場合は半歩下がり、低い声で穏やかに短く話しかけることで、興奮状態の悪化を防ぎます。

無理に行動を止めようと体をつかむと、身体拘束に該当するおそれや、双方の負傷リスクが高まります。やむを得ず体に触れる対応が必要な場面は、事業所内で定められた手順と範囲を超えないことが大切です。

📋 実践のポイント:初動対応の声かけ例

生活介護の場面で利用者が急に大声を出し始めたら、「〇〇さん、大丈夫ですよ。少し離れた場所で一緒に座りましょう」と、短く穏やかな言葉で安全な場所への移動を促します。指示ではなく提案の形で伝え、本人が選べる余地を残すことがポイントです。グループホームの夜間帯で暴言が続く場合は、1対1で対応を続けず「少し交代しますね」と別の職員に引き継ぎ、対応者を固定しないようにします。

チームで連携してできること(報告・振り返り体制)

対応が落ち着いたら、その日のうちに事実を記録します。「いつ・どこで・何がきっかけで・どのような言動があったか」を客観的な表現で残すことで、個人の印象ではなくチーム全体で傾向を分析できるようになります。

記録の書き方そのものに不安がある場合は、ヒヤリハットや事故報告の基本的な考え方が参考になります。再発防止策はサービス管理責任者を中心に、個別支援計画の見直しや環境調整とあわせて検討しましょう。

📋 実践のポイント:チーム対応のチェックリスト

就労継続支援の現場では、暴力・暴言があった当日中に①本人の状態(体調・服薬・直前の出来事)②きっかけとなった場面③対応内容④本人が落ち着いた経緯、の4点を記録し、翌朝のミーティングで共有する運用が有効です。同じ時間帯・同じ場面で繰り返す場合は、個別支援計画の環境調整項目に追加し、特定の職員だけが対応を抱え込まない体制を作ります。

こうした記録は書式を統一しておくと、担当者が変わっても同じ視点で振り返りができます。事業所内で使っている様式がなければ、既存のヒヤリハット報告書に項目を追加する形で整えるとよいでしょう。

職員自身が危機対応の考え方を体系的に学んでおくことも、落ち着いた初動につながります。業務の参考になるアイテムを探す際は、こちらもチェックしてみてください。

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職員同士で情報共有する様子
職員間でのチーム共有

注意点・リスク管理上の留意点

利用者からの暴力への対応では、身体拘束や行動制限との境界を常に意識する必要があります。緊急やむを得ない場合の三要件(切迫性・非代替性・一時性)を満たさない制止や行動制限は、不適切な対応とみなされる可能性があります。

対応の過程で職員・利用者のいずれかに負傷が生じた場合や、暴力の背景に体調不良・服薬の影響が疑われる場合は、対応に迷う場合は必ず医師・看護師・サービス管理責任者に相談してください。

また、対応した職員が「自分の対応が悪かったのでは」と一人で抱え込まないよう、管理者は事後のフォローを制度として用意しておくことが重要です。感情労働が蓄積した状態への向き合い方は支援員のバーンアウト予防|感情労働との付き合い方でも紹介していますので、あわせて確認してみてください。

一方で、暴力・暴言があったことを理由に、利用者の人格を否定したり、支援そのものを突然変更したりすることは避けなければなりません。あくまで行動と本人の尊厳は分けて考え、再発防止はあくまで環境や対応方法の調整として進めます。

利用者と職員双方の安全を守るためには、特定の個人の技量に頼らず、事業所全体でリスクを共有し、仕組みとして対応力を高めていく視点が欠かせません。

書類に記録する職員の手元
記録を書き残す職員の手元

まとめ

利用者からの暴力・暴言は、特性や状況への反応として起こることが多く、個人の責任として処理せず、背景理解と記録、チームでの振り返りを通じて対応していくことが大切です。

今日から、暴力・暴言が起きた場面の記録方法を見直し、チームでの共有ルールを一つずつ整えていきましょう。小さな積み重ねが、利用者と職員双方にとって安心できる現場づくりにつながります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の支援方針・医療的判断・法的判断を保証するものではありません。実際の対応にあたっては、所属事業所のルールやサービス管理責任者・医師・看護師等の専門職の判断に従ってください。